研究紹介:現在進行中のプロジェクト @
藤村・田中研究室
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藤村・田中研究室は、世界でも数少ないアポロ生データを所有する研究室です。
1970年代、冷戦のさなかにアメリカでアポロ計画が進められ、人類が初めて
月に人を送り込みました。
その際には多くのデータが解析され、膨大な研究成果が論文となり、今の惑星科学の基礎データとなっています。
ところが最後に月に人が降り立った1972年のアポロ17号以降も、月面に置かれた
ALSEP(Apollo Lunar Surface Experiment Packege)データは地球に届けられていました。
その後1976年2月末、予算の関係でデータの受信局がNASAから変更され、
地上から停止コマンドが送られた1977年9月30日に、月面の科学観測は終了しました。
しかし1976年3月からのデータに関しては、月震(地震ではない)データ以外の解析は、
ほとんど行われませんでした。
月震の解析は月の内部構造を調べる上で、最も重要なデータです。
しかしその次に重要な表面熱流量観測結果については、
その存在すら知られていませんでした。
2005年になって,我々がその存在に気が付き、そのデータを復活させるためのプロジェクトがスタートしました。
月面での科学観測は、地上では決して再現できない、
低重力、高真空などの特異な環境で行われたものです。
この人類の科学的・歴史的にも価値の高い貴重なデータを活用するための解析作業が進みつつあります。
一方で、アポロミッション当時、熱流量観測のPI(Principal Investigater)だったLangsethらが解析したデータも
NASAから入手し、解析を進めています.
解析の結果,これまで信じられてきたLangsethの結果は正しくなく,
月の熱流量値は大幅に下方修正されることが明らかになりました.
この結果は,これまで熱流量観測結果を基に作られてきた,
月の進化論を根底から覆すことを示唆します.
2007年3月時点で,なぜ月の熱流量値がこのような小さな値を持つのか,
その解釈を進めています.
それが出来たとき,月の進化と起源の議論に大きな貢献を
することが出来ると信じています.
まず「固体惑星」とは、大きく2つに分けられます。それは「分化天体」と「未分化天体」です。
大雑把に言うと、熱変性を受けたか受けていないかということを意味しています。
熱変性を受けた天体は、その天体を構成した材料物質から融点の違いによって層状に分かれます
(水と油のようなものを想像してください)。
ところが熱変性を受けておらず、十分に高い温度を経験していない天体の内部は、
材料物質が混ざったまま、分別されていないということを意味します。
我々が興味があるのは分化天体のほうです。
なぜならば月・地球を含む「惑星」は全て分化していると考えられるからです。
分化天体の何が面白いかというと、惑星の歴史すなわち進化を知るための、
熱変性の過程を記録している点にあります。
惑星は微惑星がお互いの重力によって集積して今のような大きさまで成長したと考えられています。
その過程で、もともと微惑星が持っていた運動エネルギーや重力ポテンシャルなどのエネルギーを
開放し、
誕生したばかりの(というよりは十分に微惑星が集積した後の)初期惑星は非常に高温となったはずです。
その後、約2.7K(-270℃)の宇宙空間の中で冷却されて、今のような姿になったのです。
微惑星が集積するのに要した時間より、その後の冷却期間のほうが圧倒的に長いため、
惑星の歴史とは、すなわち冷却の歴史とも表現することが出来るわけです。
このことから惑星の進化のことを普通「熱史」と表現します。
つまり分化天体は熱史の結果であり、逆に言えば分化している状態を調べれば
惑星がどのような歴史をたどり、進化してきたかが分かる・・・・・はずです。
ところがそうは一筋縄ではいきません。
というのも惑星の内部は直接見えないうえに、表面の変化に富んだ様子から
当然のことながら内部の様子も、非等方性であるとも考えられるからです。
このような惑星の内部を調べるために、よく使われる惑星物理学的手法として
地震学的探査とは、地震の際に発生する地震波(P波・S波・表面波)を用いて、
惑星内部の構造を明らかにする方法です。
地球でこの方法は確立しており、世界に2万を越える観測点で地震計が設置され、
今なお観測が続けられています。
地震学的探査とは、惑星内部の地震波の反射や屈折、また地震波速度の変化などを考慮して
内部の密度不連続面(モホ面など)や物質の分布を推定する方法です。
そして惑星内部の様子を推定するために、もっとも詳しく知ることが出来る方法です。
表面熱流量は、言い換えれば惑星内部の熱が宇宙空間に逃げていく量のことです。
つまり表面熱流量値は、惑星の冷却の度合いと考えることが出来ます。
ここで惑星の内部が熱的に平衡状態(つまり発熱と冷却が釣り合っている)と仮定すると、
表面熱流量値は惑星内部の総発熱量と読みかえることが出来ます。
惑星内部の発熱源としては
地球以外で、地震探査と熱流量探査が直接行われたのは月だけです。
そのため、藤村・田中研究室では現在、
(c) Fujimura and Tanaka lab. |